コンパクトで本物志向が主流の雛人形事情

2021年11月28日

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昭和の後半、高度経済成長の波に乗って段飾りの大型雛人形が一世を風靡した時代がありました。しかし、その後は都市化や核家族化による住宅事情の変化などによって、雛人形はどんどんコンパクトになっていきました。
平安時代の宮廷貴族文化に起源があるとされる雛人形ですが、時代ごとに変化してきたその形態には、実は社会の移り変わりが如実に反映されていることが分かります。
簡単にコンパクト化と言っても、ただ小さくすればいいという訳ではありません。衣装着雛人形の場合、小さい人形に十二単を美しく着付けるのは熟練の技術が伴います。木目込み雛人形の場合も小さい分、作業が緻密になりますので、コンパクト化の裏には人形師たちのさまざまな努力もあったことでしょう。
近頃の主流はコンパクトでありながら上質な素材を使い、日本古来の伝統文化をいかしつつ洗練されたデザイン、収納面の工夫までがぎゅっと詰まった本物志向の雛人形です。

目次


  1. 豪華さを競った時代もあった

  2. コンパクトな雛人形の魅力

  3. 大型に負けない本格派が増えている

  4. まとめ

豪華さを競った時代もあった


雛人形の起源は平安時代と言われていますが、江戸時代初期までの約1,000年の間は厄除けの身代わり人形としての意味合いが強く、現代のような華やかな物ではありませんでした。
1603年以降、京都御所から江戸の大奥にひな祭りの風習が伝わると同時に徐々に広く一般大衆へも浸透していく中で、江戸の街中にたくさんの人形屋が軒を連ね、雛人形は大流行していきました。

豊國十二ヶ月 弥生雛祭
歌川豊国画 出版年不明 国立国会図書館所蔵

江戸時代後期になると、雛人形人気はますます高まり、さらにさまざまなタイプが作られるようになっていきます。三人官女や五人囃子が登場し始めたのもこの頃で、1体の大きさが50〜60cmほどもある大型の「享保雛」が登場し、華美な物や大型の物に対して幕府が度々禁止令を出すほどでした。

『享保雛』(東京国立博物館所蔵)
「ColBase」収録
(https://jpsearch.go.jp/item/cobas-87603)

飾り方も、大流行する以前は男雛と女雛2体程度で平置きだったのが、人形の数やお道具など並べる要素が増えたことで
階段状へと変化していったそうです。この頃は子どものためというより、
嫁入り道具として大人の女性がコレクションする傾向が強かったようです。


特に京都では紫宸殿を模した建物の中に雛人形を飾る「御殿飾り」も登場し、競うように絢爛豪華な雛人形が作られていったのです。その後、明治・大正・昭和と戦争を挟んで一時は衰退しましたが、戦後の高度経済成長期には大型の段飾り雛人形がセットで売られるようになり、全国的にブームを巻き起こしました。

コンパクトな雛人形の魅力


都市化や核家族化が進み、住宅事情も変化した現代はコンパクトな雛人形が主流となっていますが、昨今はただ大きさが小さくなったというだけではありません。小さいながらも上質な素材を使用し、飾り台にもさまざまな工夫が凝らされていて、収納にも便利な雛人形は時代の流れに合わせて進化してきたことの現れです。


衣装着雛人形、木目込み雛人形のどちらの種類も全体の横幅が50cm〜60cm程度やそれ以下で、飾る場所を選ばない雛人形がたくさん出回っていますが、小さくて可愛いのがお好きな方には木目込み雛人形タイプをお勧めします。全体が丸いフォルムで赤ちゃんのような柔らかい表情がとても可愛いです。
コンパクトであるメリットは他にも、収納スペースに困らないという点があります。大型の雛人形ですと収納しておくスペースを確保するのも難しいですが、コンパクトな雛人形ならちょっとした隙間に収納することができますし、飾り台の中にお人形やお道具を収納できるタイプも年々バリエーションが豊富になっています。

大型に負けない本格派が増えている


ここ数年の雛人形の人気動向を調べてみると、コンパクトであると同時にいくつかのキーワードに集約されているように思われます。ひとつは「高級感」で、衣装や台屏風に使われている素材が以前に比べてグレードアップしているように感じます。


もうひとつは「モダン」な雰囲気の雛人形が圧倒的に増えている点が挙げられます。ここで言う「モダン」とは、日本の伝統美を要所要所にいかしつつ、全体的にシンプルで洗練されたデザインの物をさします。どんなテイストのインテリアでも違和感なく飾れる雛人形の人気が高まっているのを感じます。
そして「革新的」な雛人形も登場してきています。今までになかった、全く新しい斬新な発想で作られた雛人形もこれからの新しい形態として今後増えていくことが予想されます。


まとめ

コンパクトな雛人形がすっかり定着した現代では、今後もさまざまなタイプのコストパフォーマンスが高い物が登場することが予想されます。手軽に飾れて楽しめる小さくて上質な雛人形は、飽きることなく一生永く飾ることができるので、結局はお買い得ではないでしょうか。雛人形は安くない買い物なので、悩んだら節句人形アドバイザーに相談してみるのもアリだと思います。

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※本記事は掲載時点の情報であり、最新のものと異なる場合があります。予めご了承ください。


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