五月人形の子供大将の意味は?

2023年4月4日

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五月人形の種類として、鎧兜飾りの他に金太郎や桃太郎など、お話に登場する主人公がモデルの武者人形や子供大将と言われるものがあります。
子供大将は鎧兜を身に付けた、かわいらしい子供の人形で、特定の人物ではなく健康で元気な男の子の象徴です。
武者人形や子供大将を含む五月人形自体は、江戸時代になって節句を祝う行事が広く一般的に行われるようになってから、商人たちの手によって生み出されました。

目次


  1. 端午の節句に五月人形を飾るようになった訳

  2. 魔除けとお守りの意味を持つ人形

  3. 江戸時代に花開いた人形文化

  4. 時代とともに変化する五月人形

  5. まとめ

端午の節句に五月人形を飾るようになった訳



鎌倉時代、端午の節句に飾られるようになったのは本物の鎧兜や武具で、ちょうど梅雨入り前の時期にあたることから、鎧兜の虫干し等を兼ねていたのではないかという説もあります。
まだこの時代には人形を飾る習慣は無く、菖蒲(尚武)の節句として、後継の男子の成長と健康を祝うための行事でした。
徳川家康が天下を統一し、戦国時代に終止符を打ったことで江戸時代が始まり、戦をすることがなくなった武士は徐々に衰退、経済が活発になったことで代わりに商人が権力を持つようになっていきます。
しかし当時、端午の節句に武士以外の者が本物の鎧兜や武具を飾ることは許されていませんでした。
そこで商人たちは、誰でも自由に飾ることができる節句飾りや人形を新たに生み出したのです。武士の吹流しを真似て作ったのが鯉のぼりや武者絵が描かれた武者絵幟でした。五月人形もこの時代に生まれました。

香蝶楼国貞,佐野喜『端午の節句』(国立国会図書館所蔵)「国立国会図書館デジタルコレクション」収録
(https://jpsearch.go.jp/item/dignl-1305289)

魔除けとお守りの意味を持つ人形


宮中ではもともと病魔や災難から子どもを守るための身代わりとして、部屋に人形を飾る習慣がありました。これが女の子の節句人形である雛人形の起源とされています。
また、武士が端午の節句に武具や鎧兜を飾ったのは、戦いの時に身を守るものであることから魔除けやお守りの意味からです。
医療が今のように発達していなかった時代ですから、子どもの無事な成長を願って、病気や災いから身を守るためのお守りを飾る習慣が生まれたのです。
武者人形・子供大将をはじめとする五月人形も同じように、雛人形の男の子版として、お話の中に登場する人並み外れたパワーの持ち主や不死身への憧れが重なり、お守りの意味で飾る節句人形として登場しました。


江戸時代に花開いた人形文化


宮中で行われていた桃の節句が徳川家の大奥に伝わったことで、それまで貴族や武士の間でのみ行われていた節句という行事が、商人をはじめ一般庶民にまで広がっていったのは江戸時代前半のことです。
大流行になり、人形を扱う店が江戸の街中に立ち並ぶほどでした。
歌舞伎や浄瑠璃、御伽草子といった大衆文化も大流行で、金太郎や桃太郎など、人気の歌舞伎役者が演じるヒーローをモデルに人形にして売り出したのが五月人形の始まりだと言われています。
他にも神話に登場する神様や伝説上の勇者など、現代のフィギアのような感じだったのかもしれません。
この時代は子どものための節句というよりは、大人の方が夢中になっていたようです。毎年買い揃えて行くのを楽しんだ、といった記録も残されています。

斎藤幸雄 編,武笠三 校,有朋堂書店『江戸名所図会 1』(国立国会図書館所蔵)
「国立国会図書館デジタルコレクション」収録
(https://jpsearch.go.jp/item/dignl-964491)

時代とともに変化する五月人形


五月人形の人気モデルも時代の流れとともに移り変わってきました。
江戸時代に人気だった五月人形は、歌舞伎や浄瑠璃に出てくる主人公が多く、例えば日本書紀に登場する神功皇后(じんぐうこうごう)や、八幡太郎義家(はちまんたろうよしいえ)、鎮西八郎為朝(ちんぜいはちろうためとも)といった、今ではあまり馴染みが無い人たちばかりです。
金太郎や桃太郎は江戸時代から有名でしたが、明治以降は童話の影響で子どもにもよく知られる存在になったため、今でも五月人形のモデルとして根強い人気があります。
一方で「子供大将」は、特定の人物ではありませんが、かわいらしいお顔が特徴の、誰にでも好かれるタイプの人形です。本格的な鎧兜を身につけているものもあり、高度な技術によって仕上げられています。見ていて癒される、そんな点も魅力だと言われています。

まとめ


節句飾りのことをいろいろ調べてみると、時代背景によって、五月人形の形はさまざまに変化してきましたが、根底には脈々と親が子を想う愛情が込められていることに気付きます。
どんな飾りを選ぼうと、子どもの健やかな成長や幸せを願う気持ちが込められていればいいのです。
五月人形には絶対的なルールはありません。


※本記事は掲載時点の情報であり、最新のものと異なる場合があります。予めご了承ください。


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