木目込み雛人形の魅力

2021年11月28日

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江戸時代に現代の形態が確立された雛人形は、製法の違いから大きく分けて2種類に分類されます。
仕立て上げた着物を着せ付けて作る衣装着雛人形と、木を彫ったり、木の粉に糊を混ぜたものを型にはめて作った木型の筋に沿って布をはめ込んでいく木目込み雛人形です。
どちらも1700年以降、雛人形が大流行した時に産み出された文化で、脈々と現代にまで受け継がれてきました。
昨今では、家の中の飾るスペースが十分に確保できないことから、サイズは小さくても本格的な仕様の雛人形が主流ですが、特に木目込み雛人形で高級感が感じられる物に人気が集中しています。衣装着雛人形とはまたひと味違った、木目込み人形の魅力についてご紹介したいと思います。

目次


  1. 木目込み雛人形の歴史

  2. 衣装着雛人形との違い

  3. 木目込み雛人形のメリット

  4. さいごに

木目込み雛人形の歴史



「木目込み」と言われる人形製作の技法は、今から約280年前の京都で発祥したとされており、当時、上賀茂神社の宮司に仕えていた高橋忠重という人物が、神事に使用する箱などの素材である柳の木片で、小さな木彫りの人形を作った際、筋に沿って布を挟み込んで作ったのが最初と言われています。
後に「賀茂人形」という名称で広く親しまれるようになると、その技法は京都から江戸へと伝わり、雛人形の流行も手伝って「江戸木目込み人形」という独自のスタイルへと変化していきました。現代では経済産業大臣によって伝統的工芸品として指定され、受け継がれています。
元来の賀茂人形は全体が木でできており、大きさは約3~10cmととても小さく、表情が豊かでユーモラスなのが特徴でしたが、江戸木目込み人形は、桐の粉を糊と混ぜて固めて作る桐塑(とうそ)で作られている物が多く、目鼻が小さいのが特徴と言われています。江戸時代以降、雛人形を代表する技法のひとつとして、衣装着雛人形と人気を二分してきました。


衣装着雛人形との違い


衣装着雛人形と木目込み雛人形の一番大きな違いはその作り方なのですが、ひと目見た時の雰囲気が全く違います。衣装着雛人形は艶やかな衣装が最大の特徴で、お顔立ちは大人っぽく、切れ長の目元で凜とした表情をしています。一方、木目込み雛人形ですが、全体のフォルムが丸みをおびていて小さく可愛らしいという、もともと賀茂人形が持っていた特徴を現代でも踏襲していて、全体的に身体が丸くお顔立ちもふっくらとして赤ちゃんのような表情が特徴的です


また、以前は筆でさっと書いたような細い目が主流でしたが、最近では目がパッチリと大きい木目込み雛人形も多く見られるようになってきました。最近では衣装着雛人形の華やかな衣装にも負けないような豪華な高級裂地を使用したタイプも人気があります。

木目込み雛人形のメリット



木目込み雛人形の最大のメリットとしては、人形自体が小さい場合が多く、全体的にコンパクトに仕上がっているため、省スペースで飾る場所を選ばないという点が挙げられます。
衣装着雛人形の場合、三人官女や五人囃子も一緒に並べようとすると、どんなにコンパクトなタイプでも横幅65cm以下は難しいですが、1体が手のひらサイズの木目込み人形なら総勢10体の雛人形でも横幅が40cm程度に収まりますし、当然、収納スペースも少なくて済みますので、最近の住宅事情を考えるととても魅力的です。


また、可愛らしいお顔立ちはお子様にもとても人気があります。赤ちゃんの顔を見ると、その可愛さから誰でも優しい気持ちになると思いますが、木目込み雛人形も同じように、眺めていると赤ちゃんを見ているようで癒される効果があるように感じます。


飾り台の中に雛人形一式を収納できるようになっているタイプは、便利な上に見た目にも華やかで高級感があります。このように、デザインや彩りにこだわって上質な素材を贅沢に使用した高級感溢れる木目込み雛人形はこれからも増えていく傾向にありますので、一生永く飾る雛人形としてはお勧めです。

さいごに


衣装着雛人形の華やかさや美しい衣装の魅力も捨てがたいものがありますが、木目込み雛人形の赤ちゃんのようなお顔立ちは、誰にでも好かれる可愛らしさで、見ている方も和やかな気分になります。
雛人形は本来、お子様の健やかな成長と幸せを願って飾る物ですが、木目込み雛人形を見ていると、同時に『いつまでも穏やかな顔でニコニコと暮らしていけますように』という願いも湧き上がってきます。これはお子様に対してだけではなく、もしかしたら見ている大人たちにも共通する願いではないでしょうか。
年々バリエーションも豊富になっていますので、小さくて可愛らしい木目込み雛人形のこれからの変化に注目です。

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※本記事は掲載時点の情報であり、最新のものと異なる場合があります。予めご了承ください。


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