雛人形にはどんな意味がある?

2023年6月27日

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雛人形にはどんな意味があるのか…⁈それはズバリ、子どもを悪いものから遠ざける『お守り』です。
その起源は今から1200年以上も昔、宮中貴族の間で飾られていた人形だと言われています。

目次


  1. 雛人形は子どもの身代わり

  2. 医療が発達していなかった時代のおまじない

  3. いつの時代も変わらぬ親の願い

  4. 後世に残したい風習

雛人形は子どもの身代わり


節句という行事は、もともと中国で始まったもので、奈良〜平安時代に遣隋使や遣唐使などの視察団によって暦と一緒に日本に伝えられました。
桃の節句は3月の最初の巳の日に行われることから、もともとは『上巳(じょうし・じょうみ)の節句』と言われ、中国では川の水に穢れを流して身を清める日とされています。
その習慣と日本に古くからあった人の形をした紙や藁を水に流す行事が結びついて『流し雛』になったとも言われていますが、医療が現代のように発達していなかった時代には、人形を身代わりにすることで災いを避けることができるという考え方が主流でした。

左:『天児(あまがつ)』(東京国立博物館所蔵)
「ColBase」収録
(https://jpsearch.go.jp/item/cobas-86035)
右:『這子(ほうこ)』(東京国立博物館所蔵)
「ColBase」収録
(https://jpsearch.go.jp/item/cobas-85992)

平安時代、宮中貴族が子どもへの災厄を避けるために身代わりとして部屋に飾っていたものが雛人形の起源だと言われています。どんな人形かというと『天児(あまがつ)』や『這子(ほうこ)』と呼ばれる簡素なもので、多くの人が思い描く雛人形のイメージとは全く違います。
並んだ男女雛や三人官女、お道具などを階段状にして、一般庶民まで誰でも気軽に飾れるようになったのは江戸時代中頃のことで、それ以前は、高貴な人々しか飾ることを許されていない高級品でした。

医療が発達していなかった時代のおまじない



昔、節句は体調を崩しやすい季節の変わり目に、旬の植物を用いて邪気を祓い、縁起の良い食材を使ったご馳走を食べることで健康長寿を目指すという、現代のセラピーにも通じる健康法のようなものでした。
1年のうち奇数が重なる1月7日の人日(じんじつ)、3月3日の上巳(じょうし・じょうみ)、5月5日の端午(たんご)、7月7日の七夕(たなばた)、9月9日の重陽(ちょうよう)を五節句と言い、現代でも続いていますが、それぞれに必ず用いる植物があります。
1月7日は春の七草、3月3日は桃の花、5月5日は葉菖蒲、7月7日は笹、9月9日は菊で、ちょうど節句の時期に旬を迎える植物には魔除けの効果があると信じられていました。
当時は病気も災厄によるものと考えられていたので、赤ちゃんが無事に大きくなるまで育つことは大変重要な意味がありました。そのため、節句を行って健康長寿を願ったり、悪いものに取り憑かれないように、身代わりとして部屋の中に人形を飾ったりする風習が生まれたのです。

いつの時代も変わらぬ親の願い



宮中行事だった桃の節句は、徳川家康の孫娘が天皇家に嫁いだことから江戸城の大奥へと伝わり、後に女の子の成長を祝うひな祭りとして、一般庶民にも広がっていきました。
江戸の町には雛人形や五月人形を扱う行商が登場、あちこちで雛市も開かれるようになり、節句人形が大流行したのです。雛人形は最初、男雛と女雛の2体だけでしたが、三人官女や五人囃子、右大臣、左大臣なども添えられるようになり、台屏風やお道具など、小物が増えたのもこの時代です。
端切れで縁起物を象った小さなぬいぐるみをたくさん作り、紐で繋げて飾る『つるし飾り』も、雛人形が買えない庶民の手によって生み出された節句飾りのひとつです。
大根や人参などの食べ物は“一生食べるものに恵まれますように”、うさぎは“元気・飛躍”、打ち出の小槌や俵ねずみは“金運”などの意味があり、子どもの無事な成長と幸せな将来を願って一針ずつ縫い上げたもので、どんな時代も親が子を思う気持ちは同じだということがよく分かります。魔除けの意味を持つ赤色が多く使われていることから、とても華やかで、今でも雛人形と一緒に飾る節句飾りとして人気があります。

後世に残したい風習



長い年月をかけて桃の節句も雛人形も少しずつ変化してきました。
一方で、心身ともに健やかでいるために季節の変わり目に注意するという考え方は遥か昔から変わっていません。
医療が発達した現代においても“病は気から”という言葉の通り、あまり気にし過ぎるのもよくありませんが、季節ごとに旬の植物や食材を楽しみ、いつも健康でいられるように心がけること=幸せを感じられることなのではないでしょうか。
親がいつも心身ともに健康でいることは子どもにも伝わります。節句行事を子どもと一緒に行うことで、その由来や時代背景などを話し合ってみるのもいい思い出になります。

海外から入ってくる行事もいろいろありますが、独自の変化を遂げた日本の節句行事は、伝統工芸の技が生きている世界的にも珍しい行事のひとつなのです。素晴らしい日本の文化として後世に残していってほしいものです。


※本記事は掲載時点の情報であり、最新のものと異なる場合があります。予めご了承ください。


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