雛人形と一緒に飾る花は?

2023年6月27日

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3月3日のひな祭りは桃の節句とも言われ、雛人形と一緒に桃の花を飾りますが、その理由をご存知ですか?
節句の起源、中国では桃には魔除け効果があるとされており、この時期にちょうど旬を迎えることから邪気祓いの意味で使用する植物でした。
古来より病気や災難など嫌なことをもたらす邪気は、旬の植物が持つ生命力や色、香りを嫌い、寄り付かなくなると考えられていたようです。

目次


  1. 桃の節句と言われる理由

  2. 旬の植物が持つ力とは?

  3. 桜と橘を飾るのはなぜ?

  4. 色が持つ魔除け効果

  5. この時期に旬を迎える花

桃の節句と言われる理由


医療が発達していなかった昔、心身ともに調子を崩しやすい季節の変わり目には悪いものが取り付きやすくなると考え、1年の中で奇数が重なる日に邪気を祓い、ご馳走を食べ、健康長寿を願って行われたのが節句です。
今でも1月7日(人日)、3月3日(上巳)、5月5日(端午)、7月7日(七夕)、9月9日(重陽)は「五節句」と言われ、旬の植物を使った料理を食べたり、お供えしたりする風習が残っています。
桃は中国原産の植物で、その実は栄養価が高く、昔から老化防止や健康長寿に効果がある特別な植物で、桃の実が持つ不思議な効力に関する驚きの伝説がたくさんあります。
中国では不老不死を司るのは桃園を管理している西王母という女神とされていて、西遊記の中では孫悟空が西王母の桃園の桃を食い散らかしたという話や、桃を食べた仙人が不老不死になったという伝説があります。

また、日本でも魔物に桃の実を投げつけたら退治できたという話が古事記に書かれており、桃太郎もこれらの伝説が基になっていると言われています。
もともと3月3日は、上巳(じょうし・じょうみ)の節句でしたが、江戸時代以降、一般的に節句行事が広まっていく中で、子どもの災厄避けとして飾る雛人形と一緒に魔除けの効果がある桃の花を飾る風習が広がり、“桃の節句”という名称も浸透したと考えられます。

旬の植物が持つ力とは?



五節句にはそれぞれに必ず用いる旬の植物があります。
例えば1月7日の人日の節句には春の七草を使った七草粥を食べる習慣があります。これは年末年始に疲れた胃袋をいたわる効果があるとも言われますが、本来は早春に芽吹く草には邪気を祓う力があるとされ、若い芽を食べることで、その生命力を取り込み、1年の無病息災を祈念したことが由来です。
他の節句も同様、3月3日は魔除けの効果がある桃の花を飾りますし、5月5日の端午の節句は葉菖蒲の爽やかな芳香が邪気を祓うとされ、菖蒲湯に浸かる習慣があります。
7月7日は竹(笹)を飾りますが、成長が早く真っ直ぐ伸びる様子から縁起の良い植物として神事などにもよく用いられます。邪気を祓うだけではなく、昔から竹や笹の葉には抗菌効果があるとされ、食品の防腐目的でよく使用されます。
9月9日の重用の節句は、菊の節句とも言われ、秋に旬を迎える菊の花を飾ったり、菊の花びらを浮かべた菊酒を飲んだりします。もともと菊の花には解毒、鎮痛効果があるとされ、中国でも日本でも昔から生薬や漢方薬としてよく使われてきました。

3月に片付けた雛人形を再度出して飾る“後の雛”という風習もあり、別名“大人のひな祭り”とも言われています。
旬の植物は勢い良く成長するため、昔の人はその生命力に悪いものを近づけない力強さがあると感じたのでしょう。節句は現代にも通じるセラピーのような健康法の一種だったようです。

桜と橘を飾るのはなぜ?



雛人形と一緒に桃の花を飾る理由は魔除けですが、では、雛人形のセットによく見られる桜と橘(たちばな)にはどんな意味があるのでしょうか?
雛人形は宮中の婚礼儀式を表したものとされ、場所は京都御所の紫宸殿だと言われています。紫宸殿の庭には天皇から見て左側に桜の木、右側に橘(みかんに似た木)が植えられていて、桜の木の周辺を警護したのが左近衛、橘の周辺を警護したのが右近衛だったことから「左近の桜、右近の橘」と言われるようになりました。
ただし、これは天皇の目線での左と右なので、雛人形を飾る時は向かって右側に桜の木、左側に橘を置きます。
桜も橘も、もともとは魔除けの意味があり、特に橘は落葉しないことから不老長寿のおめでたい木とされています。
桜、橘以外に梅の花を飾ることがあります。梅も昔から日本人の生活には欠かせない植物で、桃と同じく3月頃に開花することもあり、旬の植物として魔除け効果があります。また、梅の花には赤色と白色があることから、おめでたい意味も込めて飾ります。

色が持つ魔除け効果



雛人形の段飾りタイプには赤い毛氈が敷かれています。これは、赤という色に魔除けの効果があるとされているためです。神社の鳥居が赤かったり、お祝いに関する物が紅白だったりするのも、それに起因しています。
赤(朱・紅)という色は太陽や炎、血液、命などエネルギーやパワーの源をイメージする色とされ、悪いものを寄せ付けない力があると考えられてきました。
医療が発達していなかった古代、赤だけではなく他の色にも、それぞれ違った力があり、組み合わせることで一色だけの時よりもさらに効果が上がるとされていたのです。
雛人形の男雛・女雛が座る台にカラフルな布が付いていたりします。繧繝縁(うんげんべり)と呼ばれる最高級の畳縁で、高貴な人だけに許されたものですが、これも色が持つ魔除けの力を組み合わせて最大限にするためのものです。
また、ひな祭りに欠かせない、菱餅やひなあられもカラフルな色付けがされていますが、同じように悪いものを遠ざけて健やかに幸せになるように、という願いが込められているのです。

この時期に旬を迎える花



雛人形と一緒に飾る代表的な花としては、桃、梅、桜ですが、他にもこの時期に旬を迎える花はたくさんあります。例えば、菜の花やチューリップ、カーネーション、フリージアなど、桃の花との相性もバッチリです。
節句の基本的な考え方としては、まず旬の植物であれば邪気を祓う効果があるとされていますので、同じ時期にお花屋さんの店頭に並ぶ花であれば、その条件に叶っていることになりますし、赤や黄色など元気な印象の色なら、さらに効果アップになりますので、自分だけの組み合わせを楽しんでみてください。


※本記事は掲載時点の情報であり、最新のものと異なる場合があります。予めご了承ください。


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