三人官女の持ち物は何ですか?

2023年8月22日

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雛人形の三人官女(さんにんかんじょ)は大多数の方が子どもの頃からご存知かと思いますが、では、それぞれ手に何を持っているか分かりますか?
実は彼女たちは婚礼儀式に使用するお酒を給仕する役目を担っているため、お酒を注ぐ道具を持っています。
中央の座っている官女は雛人形のタイプによって持ち物が違う場合があります。

目次


  1. 婚礼儀式をサポートする様子を表している

  2. 関東と関西で持ち物が違う

  3. 三人官女は宮中のできる女性たち

  4. 実は一人だけ既婚者

婚礼儀式をサポートする様子を表している



雛人形が現代のような形になったのは江戸時代中頃のことです。ひな祭り行事や節句人形が大流行し、江戸の街中にたくさんの人形屋ができました。
三人官女や五人囃子をはじめ、お付きの人々などのキャラクターが登場したのもこの頃です。当時は人形や道具を少しずつ買い足してコレクションしていく感じで、子どもの物というよりどちらかというと大人が夢中になってようです。
雛人形は宮中で行われた婚礼儀式の様子を表しているとされており、一体一体それぞれに地位やストーリーが隠されています。何を持っているか、どんな衣装を着ているかがそれを物語っています。
例えば男雛は笏(しゃく)と呼ばれる棒状の物を持っていますが、これは天皇が持つ物とされていますし女雛は檜扇(ひおうぎ)と呼ばれる高貴な女性を意味する扇子を持っています。持ち物ひとつをとっても天皇とお嫁さんであることが分かります。
段飾りの雛人形では三人官女は主役である男雛・女雛のすぐ下に位置し、婚礼儀式の進行をサポートしている様子を表現しています。

関東と関西で持ち物が違う



雛人形の持ち物は関東と関西では少し違いがあります。
もともと雛人形発祥の地は京都(朝廷)で、江戸時代になって大奥に伝わったことから一般にも広まったと言われています。そのため現在でも関西では宮中の作法をもとに男雛が向かって右側、女雛を左側に飾る習慣が残っていますが関東では逆に飾ります。
持ち物も同様で理由ははっきりしませんが、中央の官女は関東では三宝(さんぽう)という盃を載せる台を持ち関西では島台(しまだい)と呼ばれるお祝い品を並べた台を持つのが一般的とされています。
また仕丁(しちょう)と呼ばれる段の下の方に飾る三人組の持ち物は関西では、ほうき、ちり取り、熊手ですが関東では台傘、沓台、立傘を持っています。並び方や飾り方も若干違いがあるようです。

三人官女は宮中のできる女性たち



三人官女は宮中でお世話係として働くキャリアウーマンで、動きやすい小袖と袴を着た上に小袿(こうちぎ)という艶やかな着物をまとっています。
これは宮中の中でも特に選ばれた者だけが身につけることができる上質な装束で、髪型も女雛と同じお垂髪(おすべらかし)ですので、かなりのエリートだということが分かります。一説によると三人官女たちも天皇家に近い高貴な家の女性たちなのです。
向かって右側の官女が持つのは、長柄銚子(ながえちょうし)と言われる物で、盃に直接お酒を注ぐ道具です。向かって左側の官女が持っているのは長柄銚子の中のお酒が減ったときに継ぎ足す道具で、銚子(ちょうし)または提子(ひさげ)という物です。直接お酒を注ぐ役目の方が位が高いという話もありますので、この場合は長柄銚子を持っている方が位が上なのかもしれません。
彼女たちを眺めていると婚礼の儀式という晴れの舞台で大事な役目を果たす緊張感が伝わってくるようです。

実は一人だけ既婚者



中央の官女は一人だけ座っています。両脇の官女と顔を見比べると眉がありません。最近はお歯黒をしていない場合も増えているようですが、昔は中央の官女だけお歯黒をしていることが多かったのです。
医療が発達していなかった時代、女性は結婚すると眉を剃り、虫歯予防として薬品で歯を黒く染める習慣がありました。おそらく年齢的にも両脇の官女より上だと思われますので、三人官女の中でもリーダー的な存在ではないでしょうか。お内裏様に盃(島台)を直接渡す大役を担う官女だと想像できます。
いずれにしても現代のキャリアウーマンと同じようにバリバリ働く女性たちの象徴でもあり、婚礼儀式という華やかな舞台で注目される役目に相応しい凛とした顔立ちの頼もしい女性たちです。


※本記事は掲載時点の情報であり、最新のものと異なる場合があります。予めご了承ください。


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